まずは第１０話、すでにニコ動で見てましたが、このお話の全体像がようやく見えてくる転機の回なので、改めて視聴。
かなり入り組んだ物語を、要所要所だけ上手にピックアップすることで無理なく語りきった、見事としか言い様のない回。

この３０分で、ほむらという少女が長い長い孤独な戦いを続けてきたこと、ほむらにとってまどかという少女がどれだけ特別な
存在かが、狂おしいほど伝わってきます。すでに様々なパロディなどに使われてるほむらのストーカーまがいのまどかへの執着。
それもそのはず、ほむらはこの絶望的な戦いを、まどかという光のみを目指して戦い抜いてきたのだから。
しかもこの戦いの孤独さの最たるものは、ただ一人救いたい対象のまどかにすら理解されないということ。
そして彼女は目的のために、無理にでも強く賢くならざるを得ない。病弱で引っ込み思案だった彼女は、肉体的にも精神的にも
強くなり、そして荒んでいく。
何度も繰り返される出発点である、まどかと初めて会う日の目覚め。その表情も最初は「まどかを救える」という希望に満ちて
明るいが、魔法少女のシステムを知り、そして最愛のまどかを自ら手にかけることにすらなり、心が冷え、乾いていく。

この不安から希望、そして絶望寸前までのグラデーションを見事に演じた斉藤千和さんがすばらしかったですね。
もともと幼少キャラで評価の高かった千和さんですが、最近は「化」などでクールキャラをやるようになり、『まどマギ』でも
そういうキャラかな〜と思ってましたが、１０話を見る限りでは、彼女の演技の幅と実力を重んじられての抜擢だったんじゃないで
しょうか。もともと幼少キャラを多く演じてたころから、泣きの演技はすばらしかったですしねぇ。
今回も、まどかに手をかけるシーンの「泣き」は、本当にぞくっとしました。
もともと好きな声優さんでしたが、この回でさらに大好きになりました。


第１１話、まさかとは思いましたが、まどかの潜在能力が単なる主人公補正のチートではなく、ほむらがまどかのために何度も
時間を繰り返したことによる因果の集中が原因だった…。本当に隙のないお話だなぁ…。
さらにキュウべえからまどかに語られる、遠い過去から延々と続く魔法少女の悲惨な歴史。

お互いに追い込まれた状態で、ワルプルギスについて語り合う二人。当然かみ合わない心と時間。
そこで、今まで硬く閉ざされていたほむらの表情が一気に崩れ、まどかを抱きしめる。
こらえてきたものがとうとう弾けてしまう瞬間。どんなに抱きしめても、どんなに言葉を重ねても、それは本当の意味では
伝わらない。なんという残酷な運命。

そして、決死の覚悟でワルプルギスの夜に立ち向かうほむら。最初はゴルフクラブから始まった彼女の武器が、軍事用クラスまで
強化されていても、まったく歯が立たない。
なぜそこまで戦うの…と問うまどかに、キュウべえが答えたのは「希望」。おそらく彼には感じることの出来ない「概念」でしか
ないだろうもの。そして、希望を持つ限り救われない運命。

そこでまどかが下した決断は…。そして繰り返すたびにまどかの因果を増やす事実に絶望しかけたほむらは…。
というところで終わるこの回。

思ったとおり、１０話以降は怒涛の急展開。もうこの残酷な劇を見つめる以外できない。
どこをとっても重く切ない話でしたが、まどかと母親との短いやり取りが印象的でしたね。
まどかは母親を相手にに、自分が正しくゆるぎないか試してるんでしょうね。一人で決断するには重過ぎる問題に対峙して。


そして最終話。
まどかがとった選択は、「すべての魔女を、そうなる前に消し去ること」。
すなわち、魔法少女と魔女によるエネルギーシステムの、そのシステム自体を書き換えること。
法則を司ることになるまどかは、時間すら超えるより高次の存在、神ともいえる存在にシフトする…。もはや人間ではいられない。
すべての魔法少女を絶望から救うため。

時間を超える能力者であるほむらだけが、再構築される世界と「まどか」を見守れる…。
そこで現れたのは…。

まさかの、無限プリ…じゃなかった、無限まどか！魔法少女の衣装もしっかりバージョンアップしてる！
本当に天元突破しちゃったなぁ、まどか…。
とか、一瞬笑ってしまいましたが、このあとがまた、ねぇ…。

高次の存在になったまどかは、時間を超越してすべてを知る。そして、ここへ来てようやく、ほむらの長くて孤独な戦いを、
一番理解して欲しい人が受け止めてくれたんですよね…。ほむらちゃんの無限の一ヶ月は、ここで報われたんですよね…？

でも、まどかとほむらの暖かいひと時は本当に短く、まどかは本格的に上の次元へとシフトしていく。
わずかな奇跡の予兆を残して…。

そしてラストは、まどかの周辺の人物に残された「奇跡」をゆっくりと追っていく。
システムは完全に書き換わり、魔女の変わりに魔獣が町を闊歩する世界。魔力を使い切った魔法少女は魔女化せず、ただ消滅する
世界。それだけなのに、確実に魔法少女の世界は、以前より希望にあふれている。
あれほど険悪だったインキュベーターとの関係すら、かなり温厚といえる状態に。
そして「どこにでもいる」まどかは、家族にささやかな記憶をとどめている。そして「片身」であるリボンを受け取ったほむらには、
より濃厚に…。
どうやらほむらは、想像以上にまどかの記憶が残っていて、さらにはまどかを「感じる」ことが出来るみたいですね…。
最後の英文のメッセージ、
「忘れないで、いつでもどこかで、誰かがあなたのために戦っている。彼女を覚えている限り、あなたは一人じゃない」
ほむらはまどかの記憶を背負い、まどかの守りたかった世界を守るために、戦い続けるんですね…。


正直、序盤のキュウべえのセリフで「まどかが神になる」というエンドはありそうだなぁとは思っていました。
でも、さすがにここまでディティールの凝った広げ方は、想像だにできませんでした。
しかも、広げに広げた風呂敷を、鮮やかに包んでしまいました。これはもう脱帽です。
当面の不幸や悲しみを救うどころか、すべての魔法少女の悲しみを救ってしまうとは。
もしかしたら、他の作品の魔法少女たちが活躍できるのも、「魔法少女の守護神」鹿目まどかが見守ってるからなんじゃないかと
いう妄想すらしてしまいます。

すべての謎に答え、さらに希望に満ちた、すばらしい最終回だと思います。
この世界をつむぎあげたすべてのスタッフ・キャストの方々に、最大限の惜しみない拍手を。
すばらしいものを見せていただき、本当にありがとうございます。


【以下余談】
・まどかがほむらを残して、光になって消えていくシーンで、クレしん映画『ブタのヒヅメ』のぶりぶりざえもんを思い出しましたｗ
いえいえ、馬鹿にしてるのではなく、『ブタのヒヅメ』のそのシーンでも私泣きましたから。


・『まど☆マギ』を通してみての印象の一つに、「藤子Ｆ先生の作品を見てるみたいだ」というのがありました。
タイムワープを扱ってるというのも確かにありましたが、それ以外にもＳＦ（すこし・不思議）な部分とか、ちょっぴり切ない
部分とか。まあ、コレは私がＦ先生信者だからかもしれませんが。


・メインがあくまでまどかとほむらの話でしたのであまり触れてませんが、マミ・さやか・杏子のお話にも感じいってますよ。
マミさんは最後まで中二病だったのが…ｗ　円環の理って…ｗ　でも、最後生きてて良かったなぁ…。
さやかちゃん、命は救えなかったものの、絶望に陥るのは阻止できてよかったよね…。数多いるはずの「魔女になった魔法少女」の
本作品における象徴でありましたし。
杏子ちゃん、友達できてよかったね…（´ω｀;）でも性格的にはけっこう好きなキャラでした。