正直、今回はかなりつまらない、というか、全体的にポンボケでぬるいです。
だいたいつまらない映画だといっても、なんかしら記憶に残ってるものです。
「何がテーマか」とか大げさなことを言わないまでも、「何がやりたかったか」「見せ場はどこなのか」くらいはわかるし、
人に感想聞かれたときに話すこともできます。でも今回の映画は、ほんと説明に困る。どこにも焦点が当たってないとでもいいますか。
ひとつひとつ説明を入れますと、

・説明がくどい。
子供向けならなおさらですが、それが大人向けであっても世界観や状況の説明ってのはかなりやっかいなものです。
うまく伝わらないと観客はその映画のお話に入り込めないですが、だからって説明をセリフ言葉で長々とやられても、絵的に地味になる上に
理屈っぽくなって、退屈してしまいますよね。
だもんで、スマートな映画の導入部は、背景や人物の動きなど様々な要素を駆使して、言葉以外の情報をフルに使ってなるべく自然にやって
もらいたいものですが…。

まず前提として、今回はとにかく状況設定が分かりづらいんですよ。子供向けならなおの事、たとえば去年のスパイだったらスパイものだとか、
宇宙人襲来なら相手が宇宙人とか、早いところ理解させてお話の世界に引き込んでほしいんですよ。子供の集中力の持続を考えたらなるべく
早い方がいい。だから「ありがちの設定」は悪く考えがちですが、それはそれで、説明がかなり省けるという利点があるわけです。

でも、今回は設定が分かりづらい上に、「悪役がいない」というチャレンジブルなことに（この辺は後述します）トライしてるのも相まって、
しかもそれをほぼ全部セリフで説明しようとするから、序盤でカスカベから舞台が変わってから、体感時間で１０分くらい延々と説明。
まあ、さすがにそれだと子供が飽きると思ったのか、説明シーンだけミュージカル仕立てにしてるもんだから、結果として長い上に妙に
解りづらい説明シーンとなってしまって…。
しかも、さらにまずいことに、それらに耐えて状況を理解してみても、そんなに魅力的な設定には感じないという泥沼('A`)…。

・何がやりたかったのかわからない。
先にも述べましたように、今回のメインはひまちゃんで、ひまちゃんとしんちゃんの兄妹の絆の再確認をやりたかったんだろうな〜って
想像することはできます。でも、正直うすいんですよ、その辺り。
もちろんひまちゃんが、赤ちゃんだししゃべれないっていうハンデはあるのはわかります。でも、『ケツだけ爆弾』のシロですらもうちょっと
目立ってましたが…。特に前半は、派手なドレス着てはしゃいでただけだし…。
しんちゃん側も、「ひまがいなくなってしまう」ことの重要性にあらためて気付くという動機づけが薄いですし…。

ここのもう一つ問題があるわけで。
先ほどちらりと今回は「悪役がいない」と述べました通り、今回はいわゆる「敵」はいても、悪人はいません。相手側にも正当な理由があって、
しかもしんちゃん側（地球側）にも良かれとして行動している。
そのこと自体は悪くないというか、主人公を引き立てるためのお設え的な悪役（たとえば『カーズ』のアレとか）が多いなか、意欲的な試み
だとも言えるでしょう。志やよし！です。ボスである大王ゴロネスキーも、一見すごくうさんくさいけど実はいい人で、面白いキャラでした。
一番印象に残った人物かも。
でも、それが上手くいってるとはあまり思えないんですよね…。むしろ、敵の立場が複雑になり過ぎて、余計に世界観をややこしくしています。
「ひまわりをとるか、地球をとるか」とか言われても、ポカーンですよ。
加えて、相手が悪者ではない分、ひまちゃん自身が不幸な状況に見えないので、しんちゃんが行動する動機や緊迫感も薄いままという。

以上の２点ですらかなりまずいのに、輪をかけて「地球のヒママター」とか「惑星のバランス」とか言われても、なにがなんだか。

これらの要因がごっちゃになって、全体的な印象としては「なんかよくわかんないけどめんどくさいことがめんどくさくなってる」という感じで
ぼんやりとした感触の物語が何となく進んでいる感じで、見せ場がどこかわからなくて非常に盛り上がらないし、入り込めない。
先ほどのゴロネスキーをはじめとして、一つ一つの要素に魅力がないわけじゃないんですが、それが効果的に発揮してるわけでもない。

今年の映画『ドラえもん』もそういう意味では似てるんですが、やろうとしてることを詰め込みすぎです。
ドラは余計な要素を入れて本編を台無しにしてしまった感じ。しんちゃんは詰め込みすぎて焦点がぼやけてしまった感じ、とでもいいますか。
どちらもとにかく、アイデアは良くても上手く消化できてないという印象が強いですね…。脚本力が弱いとでもいいますか。
特にしんちゃんの方は、今のままの路線でもうちょっと各要素をダイエットすれば、もっと入り込めたのになぁと残念に思います。