まずはお話の方から。
今回のお話の主人公は、周りにうまく溶け込めないでいる二匹の妖精です。
方や子ギツネ型の妖精エンエンは、大好きなプリキュアに熱心に打ち込んでる反面、臆病でなかなか友達もできず、学校の講師として
プリキュアについて教えに来てくれたタルトにも、勇気が出なくて質問すらできない。
方や子ダヌキ型の妖精グレルは、ちょっと乱暴で自己主張が強く、自分を認めてくれないクラスメイトと距離を感じている。
その裏返しか、妖精たちの間で大人気のプリキュアの存在が気に入らない。
一見正反対な二人ながら、はぐれもの同士お互いを意識してたみたいで、実際こういう関係は現実の人間社会でもありそうな話です。
また、この二人は表面上正反対ですが、「みんなと仲良くしたいけど、自分からの一歩が踏み出せない」という意味では同じなので、
同類として惹かれあうのは当然なのかもしれません。
『AS1』があゆみちゃんの物語だったように、
『AS2』はエンエンとグレルの物語です。
プリキュアは派手に活躍してるので一見そうは見えませんが、あくまで二人の物語のサポート役に徹しています。
これは今後もASシリーズの特徴になるんでしょうか?下手に特定のシリーズがメインになるのを避ける意味ではナイス判断だと思います。
二人は封印されていた影水晶と出会い、影水晶はグレルの心の闇を映した分身となり、グレルをそそのかして気に入らないプリキュア達を
罠にはめ、また自分を受け入れなかった学校を襲い始める。エンエンは断りきれずになし崩しに加担する羽目に。
影の力でなすすべもなく封印されてしまったプリキュア。事の重大さにパニックを起こすエンエンに向かって、絶望的な状況にもかかわらず
やさしい笑顔でみゆきがメッセージを託す。
「ちょっとピンチ。助っ人お願い」
暴走してもはやグレルにも手に負えなくなってしまった影は、学校に続いて妖精界全体〜太陽すら襲おうとする。
ようやくマナ達に出会えた二人は、重責に耐えかねて潰れそうになっている。そこへマナがやさしく問いかけるひとこと。
「あなたは、どうしたいの?」まさにこのセリフが今作の背骨といってもいいでしょう。すごく優しく、そして重い言葉です。
そしてこの問いに二人が答える。
「あいつを止めたい!」
「キュアハッピーみたいに笑いたい…」
あえての暴言ですが、ここでこの物語はほぼ解決してるんですよね。
この物語のメッセージは「今の辛い状況をどうやって変えるか、そのために自分に何ができるか」だと思います。
この日記でも触れた
「プリキュア新聞」のプロデューサーインタビューでも「NS2のテーマはいじめ」と語られてましたが、
そういう前知識なくても(実際見るまで私はすっかり忘れてました)はっきりと伝わってきます。
当然ストレートにいじめを扱ってるわけではありません。妖精学校の生徒の妖精たちがいじめをしてるなんて絵は、さすがに子供には
見せられないでしょうし。
いじめそのものを扱ってるのではなく、大枠でクラス(社会)と上手くいかなくて辛い状態。そこで、クラス側(居心地の悪い社会)の
問題とは別に、その状況で
「自分に何ができるのか」に焦点を絞って、そこだけを丁寧に描いているのだと感じました。
上手くいかない時、辛いとき、絶望した時、それでも自分にできることはあるだろうか。
「あなたは、どうしたい」のか。
具体的に何かできなくても、自分の意思をだれかに表明するだけでもいい。助けを求めてもいい。
そうしたら、風が吹くかもしれない。プリキュアがあなたを手伝いに来てくれるかもしれない。
あなたの
「どうしたい」に共感して、答えてくれる誰かが。
あなたの身近なプリキュアは、まだあなたに気づいていないのかもしれない。
だから、意思を示してほしい。手を挙げてほしい。ちょっとだけでいいから勇気を出して。
ここでちょっとだけ脱線しますが、この日記で何度も取り上げて絶賛してる作品に
『映画アンパンマン よみがえれバナナ島』があります。
一見全く関係ないこの話、根っこの部分で似てると思うんですよね。
『バナナ島』は、原作者やなせ先生もおっしゃるように、テーマは「復興」。
同じ現代の深刻な問題とはいえ、全然違うテーマです。
しかし
『バナナ島』では、へそ曲りで自分勝手のバンナ姫が、それでも愛してるふるさとが荒されていく現実を目の前にして、
その脅威に対して立ち向かっていくアンパンマンを見て、「自分はどうしたいのか」と意思決定するまでの物語です。
実際は
『NS2』同様、もちろんその決定の後もかっこいいアクションシーンが続くのですが、テーマ的には余談といっても過言ではない。
ここで去年私が書いた
『バナナ島』の感想を読み返してみて、ほんとそのまんまのことが書いてあって笑いましたw
>もちろん最後は大団円。本当の復興に比べれば、あまりにも安直なラストなのかもしれません。でもこれでいいのです。
>この物語は、バンナ女王が自分で動き始めた瞬間にある意味完成したのですから。後の余韻はハッピーであればいいんです。
>すでにこの物語には、困ったときには「どうしてほしいのか」と「なにをすればいいのか」というとても大事なものが鮮やかに描かれてるのだから。
>もちろんそういうテーマじみた部分は本来のお客である子供にはピンとこないかもですが、いつか何かの際にふと思い出すんじゃないかな、とか。
この引用部分、本当に今回の
『NS2』にもぴったり重なりますね。
もし
『NS2』のテーマ部分に激しく反応されたのなら、ぜひ合わせて観ていただきたいです。
さて、小難しいメッセージの話はひと段落したので、今度は「お祭り的な部分」のお話。
今回感心したのが、上記のようにテーマがしっかりしててお話としてもちゃんと面白いのに、ところどころの見せ場もすごく上手い。
それぞれ特徴のあるプリキュアを、効果的なシーンで登場させてるので、「なるほどそうくるか!」と感心しきりです。
太陽が闇に浸食されていくシーンで、「太陽と月の力を持つプリキュア」としてサンシャインとムーンライトが飛び上がるシーンとか、
ぞくぞくしましたよ。
前作は
『5』以前のキャラはセリフが全くなくアクションのみ〜おそらくは予算的な部分が大きいのでしょうが、旧作ファンとしては
仕方がないとは思いつつもちょっとさみしいな〜と思ったもんですが、今作はやはり声優さんを全員使えなかったのは同様なものの、
ストーリー&テーマ上必要とされるセリフを任されるプリキュアのみという感じになってますね。
今回のテーマに密接に関係する「いつでもやり直せる」ということの象徴として、敵からプリキュアに生まれ変わったパッションと
ビートが登場するシーンはしびれました。
しかしシリーズの象徴としての初代(なぎさ・ほのか・ひかり)とスマイルチーム・ドキドキチームのみ全員セリフがありましたが、
SSの咲舞二人ともいなかったりはしょうがないかなぁと思いつつも、さすがにスイートチームがエレンのみなのは驚きました。
もちろん選にこぼれてしまったプリキュアのファンにはさみしい話ですが、シリーズまるごと存在感がなくなるわけではないので、
これはこれでいいバランスになっていると思います。
でもセリフありのキャラとなしのキャラを意識して脚本書かなきゃいけないなんて、成田さんは大変だったろうなぁ…。
それとやっぱり、今回はスマイルチームが良かったですね。きちんと先輩プリキュアを担っていました。
本編の不完全燃焼っぷりが解消されて満足です。
テーマの部分でも触れましたが、文字通り、みゆきの「スマイル」が大変重要な要素になっていたのもポイント高い。
あと、細かいところだと冒頭シーンですね。
旧作メンバーの登校シーンが少しづつ描かれてるのを見て、シリーズが終わってもプリキュアたちの日常は続いてるんだなぁとしみじみ。
(まあ、髪を伸ばしたはずのいちゅきがショートに戻ってるとかは言いっこないということでw)